複雑な気持ちになります
昨年末、2015年シーズンに日本プロサッカーリーグ・1部(J1)に昇格する松本山雅FCに激震が走った。エースナンバーの10番を背負い、昨季J2リーグ得点ランク3位の19得点を挙げた船山貴之と、シーズン半ばから加入して7得点を挙げていた山本大貴の主力攻撃陣2人が、チームを去ると発表されたのだ。
山本の退団はベガルタ仙台からの期限付き移籍であったため仕方ないにしろ、船山は同じJ1の川崎フロンターレに移籍する。しかも、船山が川崎でレギュラーをつかめるかどうかは未知数だ。船山にJ1での経験はなく、かつ川崎にはタレント性のあるアタッカーが多く在籍している。
それでも、船山は移籍を決断した。優勝争いをするチームでプレーし、自らを高めるためというのも理由だろうが、「当然、年俸の問題もあります」とJリーグ関係者は指摘する。
なぜなら、Jリーグで年俸を上げるためには、“移籍の匂いがする選手”になるしかないからだ。
昨年12月14日、情報サイト「web R25」に『Jリーガー平均年俸は2000万弱』という記事が掲載されたように、Jリーグのチームは潤沢な資金を持っているわけではない。Jリーガーたちは、プロ野球選手のように高額な契約金をもらって入団するわけでもなく、平均引退年齢も25歳前後と短命である。
だが、そんなJリーガーの中にも、高年俸を手にしている選手はいる。
例えば、昨季で浦和レッドダイヤモンズとの契約が満了したマルシオ・リシャルデスと川崎フロンターレの中村憲剛だ。サッカーファン以外にはあまりなじみのないマルシオだが、Jリーグに十数人しかいないといわれている1億円プレーヤーの1人だった。
高額年俸を手にできた理由の一つが移籍だ。09年に移籍制度が変更されたことによりJリーガーの移籍は活性化し、危機感を覚えたクラブ側は有力選手の流出を防ごうと年俸を上げた。
アルビレックス新潟から移籍したことで年俸が上がったのがマルシオであり、一方、流出阻止のために年俸が上がったのが中村である。たとえ超有名選手ではなくても、移籍のオファーがあることで年俸を高めることができる。
●各チームには資金力の格差も
近年では、成績上位であるにもかかわらずサンフレッチェ広島FCから浦和に移籍する選手の多さに、疑問を呈する声が上がっているが、推定総年俸が広島の5億円前後に対し、浦和は10億円。どちらが高年俸を提示できるかは、一目瞭然だ。
推定総年俸3億円前後のチームであるサガン鳥栖に所属する豊田陽平は、14年シーズン終了後の報告会で「家族にいい生活をさせてあげたい。その点で今後の将来をじっくり考えていきたい。ご理解のほどよろしくお願いします」とサポーターにあいさつした。チームの居心地がどんなによくても、プロとして決断しなければいけない時はある。
「移籍=裏切り」では、決してない。