128☆sonic 2020/04/25 18:58 (MAR-LX2J)
●クライフが生み出した「偽9番」
クライフはバルセロナの監督に就任すると、ミカエル・ラウドルップやホセ・マリ・バケーロを「偽9番」として機能させている。これは、たまたまそれに見合ったプレーヤーがいたという理由ではなく、戦術的な理由でそのポジションに据えている。逆に、フリオ・サリナスや ガリー・リネカーのような典型的な点取り屋タイプをウイングに起用しているのだ。
クライフ監督のアイデアは、CFを前向きにプレーさせることと、CFが引いたことで空けたスペースを他のプレーヤーに使わせることにあった。
戦術的なポイントは、両ウイングをできるだけ高い位置に張らせること。ボールをキープして押し込む過程で、ウイングプレーヤーはタッチライン際になるべく高いポジションをとる。そうすることで対戦相手のディフェンスラインを規定できるからだ。
例えば、ウイングが高いポジションをとらずにCFが引いた場合、つまり3トップが後退してしまえば、相手はディフェンスラインを上げてしまえば事足りる。ところが、ウイングが高い位置をキープした場合、相手ディフェンスはCFが引いてもラインを上げられない。SBが残って、CBだけが前に出れば中央はガラ空きになってしまう。
つまり、引いたCFがフリーになれる。もし、4バックのCBが引いていくCFをマークし続ければ、中央を守るDFは1人になる。そうなると、1人になったCBは両SBとの間のスペースを1人でカバーしなければならない。明らかにカバーするスペースが大きくなりすぎる。だから、通常はCFが引いても中央のCB2人は動かない。
つまり、ウイングが高いポジションをキープすることで、相手のディフェンスラインの位置を固定できる。別の言い方をすると、4バックのCB2人は誰もいないスペースを守っていることになる。
●「好きなようにやればいい」。クライフが求めた才覚
2人のウイングで4人のディフェンスラインを釘付けし、引いていくCFのぶん数的優位がラインの手前に発生する。また、ディフェンスラインが釘付けにされているので、その手前のスペースも確保できる。数的優位を生かしてより確実にボールを保持できるわけだ。
CBのマークから逃れたCFは、フリーでパスを受けて前向きにプレーできる機会を得やすくなる。そのときは、
「好きなようにやればいい」(クライフ)
ドリブルでシュートまで持っていってもいいし、味方と連係して崩しの軸になってもいい。好きなようにやれるだけの才覚を存分に発揮することを望んでいるので、この位置でそれが出来るプレーヤーを使っている。ラウドルップはうってつけのアタッカーだった。現役時代のクライフと似た資質を持ったプレーヤーである。
引いていくCFに相手のCBがついて来た場合は、前記のとおり中央のスペースが空くので、そこをウイングが斜めに入り込む、あるいはMFが侵入する。
クライフ監督が率いたバルセロナでは、最後尾のロナルド・クーマンからのロングパスでこのスペースを急襲するのが1つのパターンとなっていた。ウイングに点取り屋を置いていたのは、CFが空けたスペースに入り込ませるためなのだ。
127☆sonic 2020/04/25 15:48 (MAR-LX2J)
◆ヨハン・クライフ
【Profile】
出身:オランダ
誕生日:1947/4/25
ポジション:MF
クラブ:アヤックス、バルセロナなど
身長:176p
『今日の誕生日は誰だ!』本日、4月25日はアヤックスやバルセロナで活躍した“トータルフットボールの体現者”ヨハン・クライフ氏のバースデーだ。
選手時代のクライフ氏はリヌス・ミケルス監督の志向したトータルフットボールを完全に体現。その類稀な戦術眼を生かしピッチ上で第2の監督として振る舞い、目まぐるしくポジションの入れ替わる戦術に欠かせない存在として君臨した。アヤックス時代には、UEFAチャンピオンズカップを3連覇し、バロンドールを3度受賞。オランダ代表でも“時計仕掛けのオレンジ”と称される精密な組織の中心となり、ワールドカップ準優勝に導いた。
バルセロナでも選手時代に“救世主”と呼ばれたクライフ氏は、現役引退後に監督としてカタルーニャに帰還。現在まで脈々と続くポゼッションというフィロソフィーをバルセロナに植え付け、ジョゼップ・グアルディオラ少年を見出しトップチームに引き上げ、リーガエスパニョーラ4連覇などの圧倒的な成績を残した。その功績は計り知れないものであり、晩年の2015年3月24日、肺がんに臥した際にはベッケンバウアー氏らサッカー界のレジェンドをはじめ、オランダ国王までもが哀悼の意を示し、世界中が悲しみに包まれた。