No.41649
威勢の良いギラギラ節ではない。深く静かに考えながら、川又はたぎる闘志を口にした。相手は8月中旬まで約6年半所属した新潟。その古巣を、川又は「敵」と明確に位置付けた。
「個人的な感情がないわけではない。でもオレがサッカーをするのは敵を倒すためやから。その相手がすげえ海外のビッグクラブだろうが、高校生だろうが関係ない。まあ、感情で言ったら『勝ちたい』かな、それだけっすね」
幸せな決別ではなかった。移籍騒動は6月。複数の海外クラブからオファーが届いたが、「今季は新潟でプレーする」という昨年末の約束を守って残留した。契約満了する今季終了後に堂々と移籍するつもりだった。しかし、それでは新潟には移籍金が入らない。新潟は移籍金を設定した複数年契約を提示した。
これでは、川又にとっては移籍先の選択肢を狭めかねない契約となる。固辞したところ、寝耳に水の「構想外」となった。ところが、一部報道では前年23得点のエースに対し、「戦術理解不足」がベンチ外となった理由とされた。川又は苦笑するしかなかった。
「まあ、なんとでも言ってほしいよ。オレはもう黙ってゴール決めて、それを言葉の代わりとするしかない。自分が結果残せば、そうやって(戦術理解不足と)言っていた方が恥ずかしくなるだろうし」
騒動の最中、不本意な経緯を自分の言葉で語ることもできた。
「やっぱり男として、黙っている方がかっこいいときもあるからね。そういうところはすごく大事にしたい」
ひとまず胸にしまった。それでもひとつだけ、伝えたい思いがある。
「オレの口からはもう一切言いたくない。新潟(のフロントや監督)については。ただ、関わってくれたすべての人とサポーターに感謝の気持ちは常に持っている。それは自分の口から言える。それ以外はもう、名古屋でゴール決めて、勝って、いい順位にいって、それしかないね。勝ちたいね、とりあえず次は」
すべての試合は敵を倒すという意味で同じ、と川又は語ったが、やはり特別な一戦だ。男の誇りをかけたゴールを、見逃すわけにはいかない。