No.237723
今季は力のある選手を補強したものの、明確なチーム像を示せず、戦力の融合は果たせていない。そこで「チームの現状がよく見えているし、ストレートな物言いができる」(鈴木常務)という理由で大岩剛コーチがそのまま監督に昇格することとなった。
大岩新監督のストレートな物言いが垣間見られた場面が一度だけある。昨季8月27日、2ndステージ第10節の横浜F・マリノス戦で、体調不良となった石井監督の代わりに監督代行として1試合だけ指揮を執ったことがある。
試合は引き分けに終わったものの、8月20日の湘南ベルマーレ戦で金崎夢生と石井監督が衝突する場面がカメラで捉えられ、その行為をとがめたヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督は、「日本代表にふさわしくない」という理由で金崎を代表から外していた。その直後の試合で石井監督が体調不良になったということもあり、好奇の目線を向けるメディアから「金崎に対するアプローチは難しかったと思います」と質問が飛ぶと、大岩コーチは力を込めて次のようなコメントを返したのである。
「僕が彼に対するアプローチが難しかったということですか?いえ、そういうことは全くなく、彼自身の行動に関しては僕が評価するところではないですし、クラブの中で解決することなので、それはもう解決していることだと認識しています。彼に対する選手としての評価は、僕自身はすごく信頼していますし、彼のプレースタイル、勝負に対する執着心、そういうものはこのチームに欠かせないと感じています」
ナイーブな問題に対して言いよどむことなく、毅然とした態度で答える。こうした姿勢を誰に対しても見せられるのが大岩新監督のパーソナリティーだ。
その試合で見せた采配もおもしろいものだった。横浜FMの齋藤学に、鹿島の右サイドから攻め立てられる中、一対一で劣勢に立っていた西大伍を代えるのではなく、傷んでいたFWの赤ア秀平を下げて伊東幸敏を入れる采配を見せた。右サイドバックには伊東が入り、西と鈴木優磨が1つずつ前に出ることで、齋藤をケアしつつ攻めに出る。
この日の齋藤を止めるのは難しく、80分に勝ち越し弾を決められてしまうものの、85分に右サイドを西と伊東で崩しファブリシオの同点ゴールを演出した。試合後、西は「これが采配」と自身の力を引き出してくれた大岩コーチの采配に賛辞を送っていた。
急遽、監督を引き継いだ大岩新監督は「このクラブの目標は高い。それを個々に感じてもらって、ピッチ内外で責任を果たしてもらいたい」と選手に呼びかけた。クラブは「勝つために代えた」と言い、新監督も「まずは目の前に試合に勝つことしか考えていない。その積み重ねが大事になる」と、すぐに来るリーグ戦に照準を合わせる。
新監督の初采配は6月4日の明治安田生命J1リーグ第14節・サンフレッチェ広島戦となる。
文=田中滋