No.238121
同30日のACL・広州恒大戦後、石井監督は「自分から責任を取ることはあるか」という質問に「それはありません」と否定した。一方で「これから(フロントと話し合う)」と明かした。実際にフロントから呼び出されたのは、解任が通告される31日朝だったが、自身の立場に影響することは気づいていたようだ。
また、選手からも「試合後、石井さんの表情が消えていた。(解任されることは)分かっていたと思う」、「敗退が決まって、クラブが何かしらの決断をしてもおかしくない。だから勝ちたかった」という声が漏れた。選手も同じように監督の危機を感じ取っていた。
強化責任者を務める鈴木満常務は「(今後)勝つ可能性を高める決断」と説明し、解任の理由として、@戦力を使い切れていない A指導方針のズレ B練習内容 の3点を挙げた。同常務が解任を決断する基準は明確で「監督と選手の信頼関係が崩壊している」「サッカーの方向性を見失っている」状況に陥った時であり、数少ない過去の解任劇では実際にそうだった。
同常務が説明するように、ピッチ上の問題はもちろんあった。2チーム分の戦力を抱えながら、過密日程の中で交代枠を残した采配は疑問が残った。それが怪我人続出を呼んだという分析も分からなくはない。ターンオーバーを諦める時期も早かったように映る。選手の自主性を重んじる指導方針は主力クラスを多く抱えるチームには合わなかった、という見方もできる。
ただ、石井監督は人望があり、選手との信頼関係は崩壊していなかった。サッカーの方向性も持っていた。今までの基準通りであれば、解任に至らなかっただろうが、決断には今季特有の事情が少なからず絡んでくる。
前期の営業収入は、クラブワールドカップ準優勝の賞金獲得などでクラブ史上最高の55億8200万円。企業が前年を下回る予算を組むことはなく、今季はこの収入をベースに予算が組まれている。
Jリーグからの分配金が増えたことや、Jリーグの優勝賞金が大幅に増額されたこともあり、クラブは2チーム分の戦力を抱え、シーズン前から積極的な投資をしてきた。
この投資を回収するためには、リーグ優勝はもちろん、クラブワールドカップに出場することが必要になる。ACL敗退で、大きな柱と見込んでいたクラブワールドカップ出場が消えた今、ピッチ内の状況と合わせ、企業として決断した側面がある。
同常務が「石井とは24年もここで一緒に仕事をしてきた。苦しかった」と話すように、簡単ではなかった。一方、この決断で「チームはもっと強くなる」という自信も持っている。
これまでシーズン途中で監督を解任した時は、必ず何かしらのタイトルを取ってシーズンを終えている鹿島。残された大会をすべて取るための大きな決断を下した。
取材・文:内田知宏