160761☆ああ 2017/11/06 09:00 (iPhone ios11.0.3)
待ちに待ったゴールが、やっと生まれた。誰もが歓喜に沸き、感情を爆発させる。そのときに1人だけ、大岩監督の元へと駆け寄る選手がいた。DF昌子だった。残り10分。引いて守るのか、前線から追いかけるのか。「どうするのか聞きに行きました」。結論は引く−。そのことをチームに伝え、意識を統一した。「ここから、僕ら守備陣の仕事かなと思っていました」。それまでも完璧。だが、ここからが見せ場だと、集中力はより一層高まった。
目の前にいたFWに最大限の注意を払っていた。以前、日本人で一番のFWを問われると「(興梠)慎三さん。僕の中では特別な相手」と即答した。鹿島入団直後の11年2月の宮崎合宿。米子北高時代は無敵を誇った快足も「鼻をへし折られました」。1対1では子ども扱い。「ぶち抜かれたではなく、ぶち置いていかれた」。興梠が移籍するまでの2年間はまるで先生と生徒だった。FWとの距離感や視線、体勢−。指摘されて修正する日々だった。
だからこそ集中など切れなかった。「1個、すきを見せた方が負けると思った。最後まで集中した僕たちが勝利を手にしたのかな」。打たれたシュートはわずか3本。興梠に許したのも1本だけだった。大声援のサポーターを背に最後まで守り抜き、ホームで7年ぶりに浦和を下した。チーム史上最多となる年間23勝目を手にした。
浦和のACL決勝進出により、分散開催となった今節。先に試合を終えて勝ち点3を上積み。優勝に王手をかけた。18日に2位の川崎Fが負ければJ1史上初めて、試合がない日に優勝が決まる。チームも当日の対応を考え始めた。2連覇、そして国内20冠目は目前に迫った。だが、日本代表としてチームを離れる昌子は「まだ優勝が決まったわけではない。何も成し得ていない。残り2試合、勝つだけ」。そこに、気の緩みはみじんもなかった。