268897☆げじ 2019/06/22 21:15 (Chrome)
男性 32歳
サッカーには夢がある
本拠地、ヤマハスタジアムで迎えた一戦
GKカミンスキーの奮闘虚しく、攻撃陣も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「J2降格だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、元日本代表でジュビロ黄金期を支え、現ジュビロ監督を務める名波は独りベンチで泣いていた
Jリーグで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今のジュビロで得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」名波は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、名波ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って次節に向けて戦術チェックをしなくちゃな」名波は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、名波はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した名波が目にしたのは、スタンドを埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにジュビロの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする名波の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ヒロシ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った名波は目を疑った
「ド・・・ドゥンガさん?」 「なんだ名波、居眠りでもしてたのか?」
「ゴ・・・ゴンさん?引退されたんじゃ・・・」 「なんだ名波、かってにゴンさんを引退させやがって」
「高原・・・」 名波は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
FW:高原、ゴン中山 MF:藤田、西、名波、福西、服部 DF:駒野
、田中、鈴木 GK:ヴァンズワム
暫時、唖然としていた名波だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
大岩からスパイクを受け取り、ピッチへ全力疾走する名波、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ジュビロードで冷たくなっている名波が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った