わずか1日の準備期間で、田中監督は停滞していたチームに3つの明確な変化を加えた。
@閉塞感を打破した「10番」の抜てき
スコルジャ体制下でベンチ外も経験していたMF中島翔哉を今季初先発に起用。4―2―3―1のトップ下に入った中島は、左サイドから中央へ絞るMFサビオとともに、ライン間でボールを引き出し攻撃のタクトを振った。中島は試合後、新指揮官について「浦和のレジェンドですし、思いも強い。ただ(就任直後の)ミーティングでかむことが多かったので……リラックスできました」と笑った。田中監督の誠実さと浦和愛が、硬直していた選手たちの心を解きほぐした瞬間だった。
A理にかなった「配置」と「時間」の整理
戦術面ではビルドアップの構造を整理した。攻撃時、左サイドバックのDF長沼洋一が高い位置を取り、右サイドバックの石原広教が残る「3枚」で形を作った。さらに「自分がプレッシャーを受けてから味方にパスを出す」ことを伝え、あえて相手を引きつけることで、受け手となる味方に余裕(時間とスペース)を配る意識を再確認した。ロングボールに頼らざるを得なかった近戦とは一変し、敵陣深くへ前進するシーンを量産した。
B「意思の伝染」を呼ぶ守備
守備では戦術的な取りどころを細かく指定する代わりに、メンタリティーを強調した。「FWがバックパスを追う姿が、周りに『連動していいんだ』という勇気を与える。その迫力を求めた」。田中監督が説いたのは、データを超えた「意思の伝染」だった。その姿勢はチーム全体に波及し、終盤にサイドハーフが下がって5バック気味になっても、最後まで決壊することはなかった。
田中監督が施したのは、自信を失っていた選手たちに本来の持ち味を発揮させるための「適切なタスク」の再分配だった。