No.3096145
どれほど時間が経っただろうか。きっとまだ17時のはず___俺は目を開けて愕然とした。なぜなら、目の前のカレンダーには2056年の文字があったからだ。どうやら俺は、30年間も眠り続けていたらしい。
身の回りや環境全てが変わっていることを少しずつ受け入れた俺は、そういえば「浦和レッドダイヤモンズ」はまだ存在するのかと気になり、現代では当たり前となった移動手段・どこでもドアで埼玉スタジアムへと向かった。
かつて俺は浦和レッズのゴール裏で声を張り上げ、浦和レッズの勝敗に感情を支配され、心から愛していた。埼玉スタジアムへの道。いつの間にか増えていた写真には、田中達也やマテウスサヴィオ、渡邊凌磨、…お。年をとった荻原も写っていた。西川は2036年に引退したらしい。肥田野はずいぶんと逞しくなって、浦和レッズで現役生活を終えたようだ。
We are Diamonds、風にのって懐かしのメロディが耳に入る。どうやら試合には勝利したようだった。30年経っても変わらぬメロディに涙腺が熱くなるのを感じながら、俺はあの頃より少しコンパクトになった埼玉スタジアムへと足を踏み入れた。
「一年間、熱い応援ありがとうございました」
現在のキャプテンであろう選手の挨拶が聞こえる。そして、関根貴大監督からのメッセージも。関根、出世したな。久々の再会に自然と口角が上がる。あの頃のBOYSの姿はなく、少しばかり寂しさを覚えた。
来てよかった。浦和レッズがあるのなら、俺はこの世界でも生きていける。週末にはここにきて、魂を熱くし、闘えばいい。そう思った矢先、ゴール裏に広がる横断幕を見て、強烈な頭痛に襲われた。
『31年前のCWCは黒字化の道具?その無責任な姿勢に対するサポーターの失望に、まだ気づかない?』
まさか。
『既定路線の社長人事、その狙いの説明を』
まさか。
『筆頭株主のビジョンと情熱次第でクラブの未来は変わる』
「う、嘘だろ…?オイ、嘘って言ってくれよ」
頭を抑えつつ、なんとか顔を上げた俺は、次の弾幕を見てついに言葉を失った。
『田口誠、堀之内聖、池田伸康はいつ姿を現す?』
浦和レッズは、何も変わっていなかったのだ。