No.864485
今般の停滞は、競技編成、人才獲得、育成体系、財務構造、経営統治、意思決定、地域資本、興行基盤等、多元的要素が長期的に累積・交錯した結果として顕現したものと見るべきであろう。
殊に重要なのは、敗戦の多寡そのものではない。敗戦という負の情報を如何に分析し、如何に知見へ転換し、如何に組織内部へ還流させ、如何に次なる意思決定へ反映するか。その自己修正機構の実効性こそが、組織の盛衰を左右する。
監督更迭、緊急補強、戦術変更による短期的浮揚を否定するものではない。しかし、主力流出への代替能力、選手獲得の再現性、育成部門からトップチームへの人才循環、収益基盤の強靭化、経営資源の適正配分が旧態依然であるならば、表面的変化は所詮対症療法に留まり、構造的問題は再び顕在化する。
また、「地方クラブ故に予算が限られる」という説明も、現実的制約としては理解できる。しかし、資源制約と競争力欠如を同義とすることには異論がある。
資源乏しき組織ほど、人才、情報、地域、信用、ブランド等の非財務資本を如何に有機的に統合し、有限資源から最大限の競争価値を創出するかという経営能力が問われる。
スカウティング、育成、興行、スポンサー、地域連携、トップチームを各々独立した施策として運用するのではなく、相互補完的な循環体系として統合すること。此れが実現されて初めて、資金力以外の競争優位が成立する。
「残留」を以て成功と定義することにも、長期的観点からは危惧が残る。
残留→戦力流出→競争力低下→興行価値低下→収益停滞→補強能力低下→更なる戦力流出。
この負の連鎖が常態化すれば、クラブは漸次的に競争力を喪失し、最終的には衰退均衡へ収斂する。
故に、現在問うべきは「誰を替えるか」ではなく、「何故、同一種の問題が反復的に発生するのか」である。
監督交代を論ずる以前に、監督交代へ問題を集約してしまう組織構造を検証すべきである。補強を論ずる以前に、毎年同様の補強を必要とする編成思想を検証すべきである。敗戦を批判する以前に、敗戦から抽出した知見が如何なる制度的改善へ転換されたのかを検証すべきである。
一勝は一勝に過ぎず、一敗もまた一敗に過ぎない。
真に重要なのは、個々の結果ではなく、結果を生産する構造そのものである。
甲府が十年後も競争環境において自立的に存続するためには、現状認識、原因分析、資源配分、人才育成、組織改革、競争戦略を一個の体系として再構築する必要がある。
今季の低迷を単なる「不運」や「一時的失速」として処理するのか、或いは既存構造を再検証する契機として受容するのか。
此の判断こそが、甲府の将来を分岐させる。
問われているのは、次の一勝ではない。
問われているのは、甲府という組織が自らの問題を認識し、自己修正し、有限資源を競争力へ転換し、その競争力を継続的に再生産する能力を有するか否かである。
現在の低迷を「敗北」として終わらせるのか、「再構築」の起点へ転換するのか。
その決断を下すべき時期は、既に到来しているのではないだろうか。