No.117826
男性 続き
しかし、刷新されたはずのチームはさらに失速する。4連敗を含む7戦連続勝ちなしを記録するなど、一時は降格圏の17位にまで低迷する。後半戦の結果は4勝3分け10敗とゴトビ体制下よりも悪化。特に深刻だったのが24から36に増えた失点だった。

 大榎監督にも情状酌量の余地はあった。シーズン途中での緊急登板で準備期間は皆無。さらにゴトビ監督が試合で使わない選手、そりが合わない選手を次々と放出してきた結果、チームは精神的に抑圧され、ベテランと経験不足の若手が多い歪な編成になっていた。
 こうした状況と首の皮一枚で残留を決めた安堵感が、大榎体制に対する危機感を覆い隠してしまった感は拭えない。神経が痺れる残留争いを経験したことと、開幕前のキャンプからしっかりと戦術の浸透を図れることの相乗効果で、チームは右肩上がりに転じるではという淡い期待もあった。

 本来ならば守備陣を中心にテコ入れを図るべきだった、オフの移籍市場でも後手を踏んだ。
母体となる責任企業をもたない市民クラブの清水は、経営の効率化とスリム化を避けて通れない宿命を抱えていた。ゆえに昨シーズンの主力だったFWノヴァコヴィッチ(現名古屋グランパス)とFW高木俊幸(現浦和レッズ)、DF吉田豊(現サガン鳥栖)との契約更新を断念せざるを得なかった。 対照的に補強は、武者修行させていた若手やゴトビ体制下で干されていた中堅を、期限付き移籍から復帰させる作業がメインとなった。元マリノス社長の肩書をもつ左伴繁雄氏が新社長に就任したのは2月1日。消極的だった選手補強を活性化させると明言したが、国内の移籍市場はすでに落ち着いていた。

 原靖強化部長と話し合いの場をもった大榎監督は、チーム得点王ノヴァコヴィッチの穴を埋める外国人FWの獲得を最優先させる。開幕直前になって、ナイジェリア代表歴をもつピーター・ウタカが北京国安(中国)から完全移籍で加入した。
 デンマークリーグで得点王を獲得した実績をもつウタカは、9ゴールとまずまずの結果を残している。しかし、手つかずのままファーストステージ開幕を迎えた守備組織がすぐに破綻をきたしてしまう。
第3節から泥沼の5連敗。大榎監督は身長180cm以上のセンターバックを4枚並べる最終ラインを組んできたが、非常事態を受けて3バックに変更する。それでも3試合連続ドローと白星をつかめない。

たとえば大量3点のリードを残り5分で追いつかれ、引き分けた4月29日のモンテディオ山形戦は、チームから守備の戦術が失われていたことを如実に物語っていた。
特に1点を返された直後にFWの選手を投入。さらに相手の反撃を許した采配からは、個の力で組織を凌駕してきたサッカー王国・静岡の理想と伝統を追い求めすぎるあまり、現実を見失っていた大榎監督の迷走ぶりが伝わってくる。

 ファーストステージは3勝4分け10敗の最下位。32失点はワースト2位タイを数えた。中盤以降の戦いで、キャプテンのボランチ本田拓也をけがで欠いたことも響いた。
オフの契約更改の席で、本田は選手でただ一人、原強化部長に対して「このチームはどこを目指しているんですか」と問いただしている。細部にまで徹底しないと絶対に勝てないと、誰よりも危機感を募らせていた精神的支柱の不在が低迷に拍車をかけた。
昨シーズンの終了後、遅くとも5連敗を喫した今年4月下旬の段階でレジェンドという肩書にとらわれることなく、大榎体制に対してシビアな決断を下していれば違った展開となっていたかもしれない。
 

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