預言者 (iPhone ios10.0.2)
2016/11/02 14:59
男性
最終節 徳島ー清水
ロスタイムに入った。ロスタイムは4分。
徳島0−清水2
小林監督はいつものようにベンチを出、腕組みをしながら戦況を見守っていた。時折、大きく手を振って(選手に)前へ出るよう指示したりもしていた。
「コバさん、こっち」 阪倉ヘッドコーチが呼んだ。
ベンチ前では、選手、コーチ一同、皆、肩を組んでその瞬間を待っていた。
小林監督は一瞬ためらったが、阪倉ヘッドコーチに応じた。本当は選手たちに指示を送り続けていたかったが。
思えば一年前、清水監督就任のオファーがあった時もためらいはあった。いや、正直驚いた。あの清水の監督をやってくれとは。日本一、目の肥えたファンがいる清水で、しかも静岡サッカーの象徴とも言える清水で監督など務まるのか。
結局、決意した。自分のサッカー人生において、これほどのビッグチャンスは他にあろうか、いやいやない。
ロスタイムは経過した。もう終わるだろう。それまで大きかった小林監督の声が鳴りやんだ。そして、小林監督の額あたりから汗のしずくが流れ落ちた。いや汗ではない。涙だった。
そして、その瞬間が来た。徳島まで駆けつけたファンの大声援、選手、コーチの歓喜の雄たけび、小林監督には何も聞こえなかった。喜びというよりも安堵の瞬間であった。