117☆sonic 2020/04/04 05:20 (MAR-LX2J)
メトロノーム型の選手は正確無比なプレーぶりとともに、どこか力をセーブしているように見えてしまうところがある。周囲から「あれほどうまいのだから、もっとやれるだろう」というふうに見られがちだ。
ベッケンバウアーはその典型だったが、現在ならトニ・クロース(レアル・マドリード)がそうだ。デ・ヨングもこのタイプである。
たしかに彼らは「楽に」プレーしている。ただ、だからといって「手を抜いている」わけではない。むしろ逆で、楽にプレーするためにさまざまなことに気を遣っている。
まず、正しいポジションをとること。相手からプレッシャーを受けにくい場所に、正しいタイミングでいなければならない。そして、完璧にボールをコントロールする。最後に的確な判断とタイミングでボールを離す。このどれもがパーフェクトにできていれば、流れるように無理なく効果的なプレーになるわけだ。
もちろんすべてがうまくいかないこともあるが、そんな時でも修正して流れに乗せる技術がある。デ・ヨングはキープ力がすばらしく、どちら側から相手に寄せられてきても巧みにボールを隠しながらターンして外してしまう。相手にプレスしたことを後悔させるだけのテクニックと足腰の強さを持っているのだ。いざという時には、驚くようなテクニックを発揮する。
たまに凄いことをやるので、「もっとやれるだろう」という見方をされてしまうのだが、氷山が、海面上で見えている部分の何倍もが海中にあって見えないように、メトロノーム型の選手たちは滅多に緊急事態にならないので、普段はその全貌がわからない。彼らのポテンシャルは底知れないわけだが、決して技術をひけらかしたりせず、必要なことを必要な分だけ行なうのだ。そこに彼らの真髄がある。
メトロノーム型の選手たちは、常にプレーを正常化してくれる。
チームのプレーリズムが乱れて雑になりはじめても、ボールが彼らを経由するとスッと収まりがつく。速くなりすぎた時にペースダウンして落ち着かせ、遅れた時にはワンタッチのパスで加速させる。チームに彼らがいることで無駄も無理もなくなり、チームはポテンシャルを十全に発揮できるようになる。
チームの「頭脳」によく喩えられるが、じつは本人はそれほど考えていないケースが多い。考えるというより、ごく自然にそういうプレーができるタイプなのだ。