1101952☆ナンバーエイト 2025/12/06 17:40 (Chrome)
2025年、横浜の空は
例年よりも少し低く、少し重かった。
春、新たな航海のはずだった海は、思いがけず荒れ狂い、船は激しく揺れた。
勝てない週が続き、順位表の下から吹き上がる冷たい風が、胸の奥まで刺さった。
残留争い——その言葉が、こんなにも重いとは知らなかった。
負けた夜、ゴール裏にこぼれた小さなため息。それでも歌は途切れず、旗は倒れず、誰も帰らなかった。
「まだ終わらせない」そんな想いだけが、暗い海を照らしていた。
夏の陽射しにも救われなかった試合があった。リードしながら追いつかれ、あと一歩のボールが届かず、悔しさが汗より先に滲み出る。
選手も、スタッフも、サポーターも、心のどこかに小さな不安を抱え続けた。
それでも——秋風が吹いた頃、チームは少しずつ前を向いた。
走る距離が伸び、声が重なり、泥だらけで守り切った1点が、希望の灯に変わっていく。
冬が迫る頃、残留を争う重圧は最後まで消えなかった。
けれど、逃げなかった。
誰ひとりとして。
ピッチで、ベンチで、スタンドで、全員が「諦めない」というただひとつの旗を掲げた。
そしてシーズンの終わり。順位表に刻まれた数字は決して誇らしくない。
けれど、折れずに戦い抜いた誇りだけは、誰にも奪えない。
2025年の横浜F・マリノス——
それは華やかな航海ではなかった。
荒波に揉まれ、沈みそうになりながらも、それでも前へ進み続けた一年。
青は勝利の色である前に、諦めない者の色。
来季こそもう一度、高く、遠くへ。
この苦しみを糧に、トリコロールの航海は続いていく。