No.953161
負けた。
大分の空の下で。
試合終了の笛が鳴った瞬間、何とも言えない静けさが胸の中に広がった。
怒りとも違う。
悲しみとも少し違う。
ただ、力が抜けていくような感覚だった。
後半9分。
自分たちのミスから失点した。
たった一つのミスだったのかもしれない。
だけどサッカーは時々、たった一つのミスを許してくれない。
追いかける展開になった。
まだ時間はある。
きっと追いつける。
そう信じていた。
そう信じたかった。
だけど時間は残酷だった。
後半40分。
坂本が退場した。
一人少なくなったピッチで、それでも選手たちは走った。
前へ。
ただ前へ。
遠く大分まで駆けつけた仲間たちの声に応えるために。
現地へ来られなかった人たちの想いに応えるために。
何とかゴールをこじ開けようとしていた。
だけど届かなかった。
あと一歩が。
あと一つが。
最後まで。
届かなかった。
振り返れば、この半年は思い通りにならないことばかりだった。
開幕前に思い描いた未来とは違った。
もっと勝てると思っていた。
もっと上へ行けると思っていた。
だけど現実は厳しかった。
怪我人が出た。
選手が入れ替わった。
積み上げたと思ったら崩れた。
光が見えたと思ったらまた壁にぶつかった。
監督は言った。
「積み上がってきたものはある」と。
その言葉を聞いて考えた。
積み上げたものとは何だろう。
順位表には残らない。
数字にも表れない。
けれど確かに存在するもの。
負けた試合の帰り道。
悔しくて眠れなかった夜。
それでも次の試合を待ってしまう気持ち。
遠征の朝の高揚感。
勝利を願った拍手。
枯れるまで出した声。
そういうものなのかもしれない。
結果だけを見れば、望んだシーズンではなかった。
胸を張れる順位でもない。
誇れる成績でもない。
それでも私は思う。
何も残らなかった半年ではないと。
苦しかった。
本当に苦しかった。
だけど、その苦しさごと愛してしまった。
だから今日の敗戦がこんなにも痛い。
だから簡単には忘れられない。
だけど。
時間は止まらない。
大分の夜もいつか終わる。
悔しさを抱えたままでも朝は来る。
それでいい。
忘れる必要なんてない。
悔しさのない物語なんて、きっと面白くない。
だから抱えたまま進もう。
また期待しよう。
また信じよう。
また裏切られるかもしれない。
また傷つくかもしれない。
それでも。
私たちはきっとスタジアムへ向かう。
青と白を身にまとい。
懲りもせず夢を見ながら。
だって好きだから。
それ以上の理由なんて、もう必要ない。
だから今は胸を張って言おう。
お疲れさま。
そして、ありがとう。
悔しさは次のシーズンへ持っていこう。
物語は終わらない。