「大分の夜を越えて」
負けた。
大分の空の下で。
試合終了の笛が鳴った瞬間、何とも言えない静けさが胸の中に広がった。
怒りとも違う。
悲しみとも少し違う。
ただ、力が抜けていくような感覚だった。
後半9分。
自分たちのミスから失点した。
たった一つのミスだったのかもしれない。
だけどサッカーは時々、たった一つのミスを許してくれない。
追いかける展開になった。
まだ時間はある。
きっと追いつける。
そう信じていた。
そう信じたかった。
だけど時間は残酷だった。
後半40分。
坂本が退場した。
一人少なくなったピッチで、それでも選手たちは走った。
前へ。
ただ前へ。
遠く大分まで駆けつけた仲間たちの声に応えるために。
現地へ来られなかった人たちの想いに応えるために。
何とかゴールをこじ開けようとしていた。
だけど届かなかった。
あと一歩が。
あと一つが。
最後まで。
届かなかった。
振り返れば、この半年は思い通りにならないことばかりだった。
開幕前に思い描いた未来とは違った。
もっと勝てると思っていた。
もっと上へ行けると思っていた。
だけど現実は厳しかった。
怪我人が出た。
選手が入れ替わった。
積み上げたと思ったら崩れた。
光が見えたと思ったらまた壁にぶつかった。
監督は言った。
「積み上がってきたものはある」と。
その言葉を聞いて考えた。
積み上げたものとは何だろう。
順位表には残らない。
数字にも表れない。
けれど確かに存在するもの。
負けた試合の帰り道。
悔しくて眠れなかった夜。
それでも次の試合を待ってしまう気持ち。
遠征の朝の高揚感。
勝利を願った拍手。
枯れるまで出した声。
そういうものなのかもしれない。
結果だけを見れば、望んだシーズンではなかった。
胸を張れる順位でもない。
誇れる成績でもない。
それでも私は思う。
何も残らなかった半年ではないと。
苦しかった。
本当に苦しかった。
だけど、その苦しさごと愛してしまった。
だから今日の敗戦がこんなにも痛い。
だから簡単には忘れられない。
だけど。
時間は止まらない。
大分の夜もいつか終わる。
悔しさを抱えたままでも朝は来る。
それでいい。
忘れる必要なんてない。
悔しさのない物語なんて、きっと面白くない。
だから抱えたまま進もう。
また期待しよう。
また信じよう。
また裏切られるかもしれない。
また傷つくかもしれない。
それでも。
私たちはきっとスタジアムへ向かう。
青と白を身にまとい。
懲りもせず夢を見ながら。
だって好きだから。
それ以上の理由なんて、もう必要ない。
だから今は胸を張って言おう。
お疲れさま。
そして、ありがとう。
悔しさは次のシーズンへ持っていこう。
物語は終わらない。