300054☆ああ  2020/08/30 21:08 (Chrome)
本拠地サンプロアルウィンで迎えた徳島戦、三バカトリオが大量失点、攻撃も勢いを見せず惨敗だった。スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は降格だな」の声。無言で帰り始める選手達の中、選手会長村山は独りベンチで泣いていた。

J1昇格で手にした栄冠、喜び感動動、そして何より信頼できるチームメイト・・・それを今の松本で得ることは殆ど不可能と言ってよかった。「どうすりゃいいんだ・・・」村山は悔し涙を流し続けた。

どれくらい経ったろうか、村山ははっと目覚めた。どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した。「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」村山は苦笑しながら呟いた。立ち上がって伸びをした時、村山はふと気付いた。

「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」

ベンチから飛び出した村山が目にしたのは、メインスタンドまで埋めつくさんばかりの観客だった。千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように松本山雅のチャントが響いていた。どういうことか分からずに呆然とする村山の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ムラ、試合前練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った村山は目を疑った
「は・・・隼さん?」
「なんだムラ、居眠りでもしてたのか?」
「て・・・鐵戸さん?」
「なんだムラ、かってに鐵戸を引退させやがって」
「反町さん・・・」  
村山は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた。

GK:村山 DF:田中 大久保 飯田 犬飼 MF:内川 岩間 岩上 喜山 FW:船山 山本

暫時、唖然としていた村山だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった。

「勝てる・・・勝てるんだ!」

白井からグローブを受け取り、ピッチへ全力疾走する村山、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっている村山が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。
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