64752☆れい 2021/10/08 12:56 (F-02L)
カズ選手のコラムです。

【サッカー人として】無理を普通にできる人
日本経済新聞 朝刊
2021/10/8 2:00

 エンゼルスの大谷翔平さんは、自分の信ずるところがとにかく変わらない人なんじゃないだろうか。

 「打者に専念した方がいい」「いや投手だけで」と意見はあっただろうし、プロで、ましてや大リーグで両方やるのは難しいというのが常識や通説だったはず。でも僕が会って話したときにもこう言っていた。

 「もともとみんな子どものころからバッターもピッチャーもやっていて。野球はそういうものでは。子どものころも、今も、これからもそうやっていきたい」

 そこにスタンダードがあるわけで、そんな大谷さんからすると「自分としてそんな驚くことはやっていない」となる。「みなさんもできるはず」と言いそうな気もする。今季の足跡は偉業なのだけれど、本人のなかでは至ってシンプルで「普通」なことというか。

 常識とされていたことがそうやって覆されていくのが楽しく、プレーに一喜一憂させてもらえる。一本のホームラン、一つの勝利に通常の倍以上の価値があるよ。見本が一つできると常識も変わっていく。倣う人も出てくる。夢以上のものを与えてもらっているね。

 「無理はできる間にしかできない。できる限り無理をしながら翔平にしか描けない時代を」といったエールをイチローさんが送ったという。そういえば昔、そんな話でイチローさんと意気投合したことを思い出す。失敗のリスクは考慮しつつも、無理をしても壊れないものをつくれたとき、より大きな価値を生み出せたという実体験は僕にもある。セーフティーにやっているだけではたどり着けない景色があってね。

 盗塁もする大谷さんに「無理しなくても」と思うときもある。投手だったら力を温存するのがありがちなような。でも大谷さんのなかでは、走れるタイミングだから走るというごく自然なこと、無理でなく「普通」の境地なのだろうね。

 練習で追い込みすぎがちな僕は「無理しないで休んだら」と昔から言われてきた。そのたびに「やめたら休めるわけだから、やめるまでは休まないよ」と今に至る。無理もいつかはできなくなるのなら、できるうちにやっておくよ。やすきに流れかねない自分にも負けたくない。「できる限りの無理を」は僕にとってもテーマです。

 (元日本代表、横浜FC)
返信超いいね順📈超勢い

返信コメントをする

💬 返信コメント:0件

※返信コメントがありません


🔙TOPに戻る